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OBOGインタビューVol.2 井上恭介さん

無鉄砲に、がむしゃらに            NHKのプロデューサーが語るMP像とは

(取材:西田裕信、藤井希有子、文:西田、協力:岡崎秀美、下村文基)

無鉄砲に、がむしゃらに。それが唯一の方程式。

NHKでプロデューサーを務める井上恭介さん。2016年にはMPの一年間を追ったドキュメンタリーの制作に携わってくださった。撮影を続ける中で、当時からのMPの移り変わりを感じたという。

 「色々と制約の多い今の時代、流れに逆らうことのリスクが昔より大きいような気がする。昔は好きにやっている奴が褒められたような風潮があったが、今は流れに逆らう人が問題視され、成功しづらくなっているのかもしれない。」と井上さんは語る。

 

 しかし、3ヶ月を通し、学生たちが変わっていく様子を撮影する中で、「根底に流れるMPスピリット、コアにあるものは同じだった」と振り返る。

 「(MPの魅力は)作品に表した通り、みんな揃って規律正しく、ではないところ。メンバーの集まり方も進み方もわからない。各々がやりたいことをやる、くらいが決まりごとで、夢中になって作り上げていく。無鉄砲に、がむしゃらに。自主性を重んじるというラインをかなり逸脱した無茶であり、チャレンジングな経験。筋書きのないドラマにもほどがある。でも、だからこそ、最高到達点のその先へ毎年到達できる。気づけば、その年の方程式が出来上がっている。」と語る井上さん。「その創意工夫の乱雑さが青春だったのかもしれない。」と笑って言った。

 

 今でも、当時のMPのメンバーで定期的に集まるという。その末長く続く関係性の背景にあるのは、ただひたむきに、がむしゃらに、共に一つのものを追い求めた経験なのかもしれない。

どうしてやれないか、ではなく、どうしたらできるか。

現在の仕事についても伺った。当時培ったクリエイティブな感性が、今の仕事に直結しているそうだ。しかし、「当時は将来の設計図や根拠なんて全くなかった」と井上さんは笑う。

 「やると決めたらやる。どうしてできないかではなく、どうすればできるか。身の丈をはみ出てでもやったら反応する人が出て来てなんとかする。」そうやって目の前のMPに熱中しているうちに、自分の目指す道が開けたという。

 

 制約が多い今の時代だからこそ、MPの経験が貴重なのかもしれないと井上さんは語る。

 「自分をぎゅっと押し込めてしまいがちなこの時代だからこそ、そういうものを取っ払って、やり方を決めないというやり方で、自然な形で仲間と一緒に見つけ出していく経験が大切なのかもしれない。わかりやすい就職のためのインターンではないが、とりあえず目の前にあるものを追い求める。結果的に気がつけばそれが大きかったりする。」

 

最後に、あなたにとってMPとは?

「今も自分の中でチャレンジを燃やし続ける原動力」

 

 NHK入局以来30年、報道番組の最前線で社会と向き合ってきた井上さん。しかし、当時を思い出しMPを語るその姿には、ただひたむきに一つの舞台を追い求めた、一人の学生の面影があった。無鉄砲に、がむしゃらに。井上さんがこの信念を大切にしている理由が、垣間見えた気がした。

 

 

 

【プロフィール】

井上 恭介(いのうえ きょうすけ)さん

 

NHKエンタープライズ 制作本部 情報文化番組エグゼクティブ・プロデューサー

昭和391964)年生まれ。昭和621987)年東京大学法学部卒業。

著書は「ヒロシマ 壁に残された伝言」「マネー資本主義」「里山資本主義」など。

MP84’ Lighting

MP85’ Chairman(現Producer

MP86’ Vice Producer(現Assistant Producer